これ以上「子供に見せたくない番組」は無い~ぶっこみジャパニーズ~
昨夜、なんとはなしについていたテレビで醜悪なものを見ました。
TBSの「ぶっこみジャパニーズ 大好評につき第5弾!世界中のニセジャパン年末一斉大掃除SP」というやつ。
大好評ってにも第5弾ってのにもうんざりするわけです。
「海外で魔改造された日本文化を、その道のプロである日本人が『成敗』しに行く」という筋書きで、海外の日本料理や柔道場について取り扱っていました。
海外で独自過ぎる発展を遂げた日本文化を取り上げた番組は過去にもあったし、海外の日本料理店に「認証」を与えて、正統とそれ以外を区分しようというのは、農林水産省が提言して物議を醸していましたね。
ほんと水戸黄門好きだな・・・
それを踏まえて、この番組を醜悪と言って差し支えないと思うのは、まずは番組の構成。
たとえば、私が見ていたメキシコの寿司屋を「成敗」しに行く編は、
「メキシコの寿司屋に『寿司職人として一旗揚げたい』と言ってやってきた変わり者の日本人、とんでもない内容の修行に耐え、ついに正体を明かす。彼は日本からやってきたこの道30年の一流寿司職人だったのだ・・・!」
という筋書き。
「ぶっこみジャパニーズ」でググるとまず「やらせ」って言葉が出てくるわけですが、これいっそやらせであって欲しい。
親切だか商売だかは知りませんが、日本からやってきたテレビ局を受け入れ、自分たちなりに当地で愛されている味を伝授するわけです。
米の炊き方から人気メニューの味付けまで手取り足取り。
それを最終的に「お前らのそんな悪食、日本食と呼ぶとはけしからん」とばかりに成敗するなど、どこまで傲慢なのかと。
要は愛国ポルノ水戸黄門風味ってことです。
悪行三昧のやつらに正体明かしてバーン!ははー!DOGEZA!ってみんな好きだもんね、すっきりジャパンなんだもんねきっと。
寿司って料理のは、生魚を安全に食べる知識の結晶だから、食中毒予防にフォーカスしてダメ出しするのはわかるんですけどね。
ところがそこまでの「メキシコ寿司屋」のこき下ろし方が凄かった。
内装の趣味やメキシコ風味の日本庭園を始め、ハバネロで味付けした「寿司タワー」やエビフライを芯にした巻き寿司とかをとにかくボロッカスに。
最終的には「寿司の番人」小川さんがメキシコの皆の前でこんな感じ↓で現れ
「ハンスよ言っておこう、刺し身に空手は関係ねぇ!包丁は前に押して切るんじゃない!すっと引いてきるものだ!」
「その目を皿にしてよく見ておけ!ニッポンには春夏秋冬その季節ごとに旬を迎える美しい景色があることを!」
などとこれ以上無いほどの煽りナレーションをバックに本格寿司を振るまい、
こんな具合に感動風味でネタばらし。
最終的には、食中毒予防も含め(これは大事だけど)正しい寿司の作り方をレクチャーして
ニセJAPANにぶっこみ完了!っつって。
いや、魔改造は日本人のお家芸でしょ?
結局わたしが言いたいのはこれだけです。
拉(引っ張る)の要素が一つもないラーメンとか、米にぶっかけたカレーとか、トルコライスとかナポリタンとか。台湾ラーメンとかあんなもん台湾でいっこも見たことねーぞ!(そういえば台湾人には天一のラーメンは許せなくて、宝屋とかあっさり系が好まれる傾向があるなーと思い出し。)
魔改造したものをそれなりに楽しんでる日本人が、どんな顔して海外に渡った文化を「ニセJAPAN」なんて言えるんですかね。
日本で食べるのと遜色ない本格寿司、と謳ってるならともかく。
「正統派の寿司は日本に来ないと食べられませんよ」っていうのは、観光資源のアピールという点から見てもいいと思うのだけれど。
子供が一緒にdisりだした
最終的にこの番組は最後まで見れなくてチャンネル変えたんですが、なぜ途中で見るのやめたかというと、子供に悪影響だからです。
うちの子供(小2)が単に不心得なのは否定出来ないですが、見てる途中から
「気持ち悪い~!」
「こんなんメキシコ人はおいしいの?!」
「アホやなこんな作り方」
などとテレビと一緒にメキシコ人の事をこき下ろし始めたわけです。
その都度「ええんや、メキシコ人が美味しい言うて食べてるんやったら」と修正かけてきたんですが、まあよそさんをdisることありきで「俺スゲー」っていう万能感を得ても、子供に良い影響なんてひとつもないですもんね。
メキシコ人は味覚障害だとか文化の剽窃者だとか日本人の味覚は世界一繊細だと思う、なんていう言い草まであと一歩ですよ。
勘弁しろよTBS。
おそらく寛容は育てないと育たない
保育園の先生が昔言ってたんですが、「甘いという味覚は育てる必要が無い」と。
育てなくても本能的に美味いと思うかららしいです。
積極的に摂取させて涵養するべきは、毒を感じさせる苦味や腐敗を想起させる酸味の味覚だと。
子供を見ていると、こういうバランス感覚を常に思い出します。
自分に近い存在を愛しく思い、周囲にある文化を愛し誇りに思う情動は本能的なものではないか。
翻って「異質な人やもの」「遠い文化」「自分には無い感覚」を尊重し、許容する心は、相当意識的に涵養しないと育たないものではないかと思うのです。
だから魔改造された日本料理を紹介するならさ、
「メキシコに変な日本料理があるらしいけど、これは意外に美味い!」ってものを探しに行くとか。
「メキシコ人の味覚に合う寿司を日本人寿司職人は作れるのか!?」とか。
そういう方向性ならこんなに醜悪にならずに済んだのにな。
お行儀が良すぎて視聴率が落ちるんかもしれないけど、少なくとも害にはならない。
もう1回言うけど、ヤラセであってほしい・・・
論点は違うんですが、この番組、ヤラセ疑惑をかけられ燃えかけているようです。
良かれと思って招き入れたら「成敗」されちゃった悲しい現地人はいなかったんだ。と私は思いたい。
そういう意味でもこの方向で燃えに燃え上がっていただき、次の第6弾は作られないことを切に願い、このエントリーを終わりたいと思います。
おまけ
これ書いたあとにプンスカしながら王将に行きましたらですね、こんなメニューが登場してましたね。
中国人にもフランス人にもまったく顔向けの出来ないイカれたメニューです(褒めている)。
辣白菜・・・スープ茶漬け・・・キヌア・・・
これを見て、「おのおのの土地で好きにやったらええがな」の思いを更に強固にしました。